僕は二度、君に恋をする


 しかも彼女が最初の座席で隣だった僕を改めて隣に指名したせいで、僕までブーイングに巻き込まれたが、後ろから飛んでくる声にはまったく動じないで弾き続ける彼女は誰よりも男前で、誰よりもかっこよかった。


 外国人の瞳を持つ彼女に、始め僕は恐れを抱くばかりだったものの、一緒に弾くうちに好きになっていった。

 ぶれない彼女を見て、僕は一生懸命弾くことで彼女の支えになりたいと、指名に応えたいと思ったものだった。



 音楽で憧れた人を、音楽で支えたい。

 それは、どうやら初恋の時から変わっていないようだ。

 そういえばあの時からずっと、ピアノ一本に絞ってからも、あの時の「ルイーゼ」のような音楽をしたいと思いながら音大まで来たのだった、という初心も同時に思い出した。


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