僕は二度、君に恋をする



 思ったより部屋は荒れていなかった。

 きれい好きとは聞いていたが、こいつはヤケになるから、部屋もとっ散らかしているのではないかと思ったのだ。さすがにいくつかの服は脱ぎ捨ててあったが。


「言うて、来てくれて嬉しい。」


 僕はその言葉がマキの口から発せられたと理解するのにしっかり五秒かかった。


 小さな座卓に向かい合って、マキが入れてくれたコーヒーをすすった。


「明日、三時からレッスンだろ?」

「うん。」

「行けるか?」


 うーんとうなって、マキはそのままうしろのベッドに流れ込んだ。

 部屋着のショートパンツから出ている太ももが思いの外白くて動揺する。マキはわかっていない、僕だって何も思わないわけじゃない。


「なんだよ、男に捨てられたらレッスンも捨てていいって、誰が言ったんだよ。
 てか忘れているかもしれないけど、オレだって男だよ?んな目の前に太もも差し出してんじゃねぇよ、危ないな。」


 そう言って、軽い感じで太ももを叩く。それでも僕には渾身の勇気だった。


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