僕は二度、君に恋をする
「今日、調子良さげに吹いていたな。」
実技試験前最後のレッスンの後で、僕らはシアトル風コーヒーショップのテラスにいた。
猛暑はすぐそこ、青い空に濃い緑が映える。
「うん。なんか楽しかった。」
新発売のマンゴードリンクをすするマキは、相変わらず生意気で強気だったけれど、あれ以来僕には素直に接するようになった。
「泰彦の伴奏はやっぱり弾きやすい。」
ちょっとだけ恥ずかしそうに小悪魔風な微笑みをたたえて、彼女は僕を一瞬だけまっすぐ見た。
その時、僕の目を捕らえた瞳は、初恋のそれにそっくりだった。