僕は二度、君に恋をする
「そういえばさ、前から思っていたんだけど、マキってちょっとハーフっぽいよな。」
「え、知らないの?わたしハーフだよ?
ドイツで育ったから、マキって呼ばれるより、ドイツ語の名前で呼ばれていた年数のが長くてしっくりくるんだよね。
それでマキって名前、嫌いだった。」
僕は想像もしてみなかった可能性に、声が震えた。
「なぁ、マキってさ、クラリネット始めたのは十歳って言ってたよな。
その前は何か別の楽器やってたの?」
マキは笑い声を上げてから言った。
「笑わないでね。実は三歳からヴァイオリンやってたんだ。
でもね、ヴァイオリンってオーケストラだと何人もいるでしょう?
それで、やれ席がどこだとか誰が前だとかやってるの、嫌になっちゃったんだよね。
クラリネットは大概ふたりくらいだから、気楽でしょ。」
僕はどうも、同じ女の子に、二度恋をしたらしい。
ーThe Endー