僕は二度、君に恋をする
それから数日後、放課後にクラリネット科のおさらい会があった。もちろん僕はマキの伴奏者として出番があった。
お辞儀をしてチューニング。体勢が整うとマキが少し振り向いて僕に視線を寄越す。
身内だけの本番ではあったが、それでも多少こぎれいな恰好をして演奏をするわけで、ちょっとフリルのついた黒ブラウスに黒のパンツというマキの非日常的な姿を、一瞬、きれいだ、と思った。
でも次の瞬間に、僕は音を出していた。
こいつは普段から暴れっぽいが、本番テンションはもっとどうなるかわからない。
それはライブならではの楽しみではあるが、時に、マキが高みにいて、自分の音楽的能力が低いから合わせられないのではないかと、僕にとっては冷や汗ものでもある。
それでも僕は、できる限りはどんな出方にも対応できる包容力を持っていたいと思って、練習し、勉強する。