僕は二度、君に恋をする
「ジョン。大人の愛って何かな。」
僕の頭はいよいよ蒸気を吹きそうだったが、そこは冷静なフリをしてみる。
「キュンキュン、じゃなくて、キューンなんじゃないかな。高校生がスタッカートのついた八分音符なら、大人なるとテヌートで四分音符みたいな。」
あさっての方向に飛ばしていた視線を近くに戻してみたら、マキの鋭い視線に射抜かれる。
「何言ってんの?」
「え、悪くない例えだと思うんだけど。」
マキのスルーをかまされて僕のスベリポイントは加算された。
「あれだ、甘ったるいカフェオレじゃだめなんだよ、きっとブラックコーヒーにスイートさを感じるような……。」
「あたし、コーヒーはブラック派だよ。酸いも苦いも感じてる。」
「じゃあ、なんで……。」
「それはね、」
マキは今度、普段からは、特に先ほどの冷たさからは想像もできないほどキュートな表情をする。
「ミチタカくんが、カフェオレ好きだから。」
「つまり、僕は……お宅のカップルの愛を深めるために、毎度骨を折らされているのか……。」
悲しいかな、僕はふたりのラブを助長させていたわけだ。今度買って行く時はカフェオレに学食で七味を振っていくことを心に誓った。