どこまでもパラレル
見回してみたが、直矢の元彼女たちは見当たらなかった。
きっと幸せな家庭生活を送っているのだろう。
改めて直矢の薬指に視線が動いた。
シンプルなデザインだが、綺麗に輝いていた。
この人の笑顔のように。
それは彼の幸せな生活を想像させた。
ふと直矢の視線を自分の薬指に感じた。
「ああ。これ?」
私はなんでもないことというように、手をひらひらさせながら続けた。
「なんとなく縁がなくてね。未だに独りなの」
訊かれてもいないのに答えていた。
しかも、それは嘘だ。
ついこの間、離婚したばかりだった。
結婚する前は、優しげに見えた笑顔は、一緒に生活をしてみると頼りなく情けない表情にしか見えなかった。
馬鹿にしたような態度をとり続けているうちに、夫は豹変した。
私に暴力を振るうようになったのだ。
耐えきれず、離婚の道を選んだ。
これもきっと私に原因があるのだろう。
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