Chat Noir -バイオハザー度Max-
「朝都の実家ってどこ?」
缶チューハイを飲みながら唐突に黒猫が聞いてきた。
「実家は名古屋。名古屋市内だよ」
「ふーん。朝都の家族って何人?」
そー言えば私って実家のことあんまり…てかほとんど話してなかったなぁ。
「両親と私。一人っ子」
「そーなんだネ。じゃぁ俺が朝都をお嫁さんにもらうとき、お父さんに怒られるだろうな」
“お嫁さん”ってところにちょっとドキ。
「大丈夫、だいじょうぶ。うちあっさりしてるから。娘はやらんってタイプじゃないよ」
「知らないだけじゃない?俺だって親が三年もあの人と付き合ってること知らなかったし」
あの人ってのはペルシャ砂糖さんか…
「ねぇ、黒猫。やっぱりお父さんの再婚は寂しい?」
気になってたことを聞くと、
「俺、婿養子に行こうかな。財津 倭人より“真田 倭人”の方がかっこいいと思わない?
武将みたいで」
見事なまでにまたもスルー。
てか武将てね。
「あんた武将って顔じゃないじゃない」
「幸村(ユキムラ:真田 幸村)だって武将顔じゃないじゃん。あの顔で豊臣 秀吉を打ち破ったんだよ?すげーじゃん」
「豊臣 秀吉じゃないわよ。徳川 家康。真田は西軍よ。ちなみ大坂夏の陣で、打ち破ったわけじゃなくて追い詰めたの」
「そーだっけ?ってかさすが頭いいね」
黒猫は感心したように頷く。
ってか私たち、こんなときまでお勉強してる場合じゃないわよ。
いっつもはぐらかすんだから。
こんなときぐらい、弱音吐いてほしい。
甘えてほしい。
たぶん……黒猫はずっと長い間、こうやって内に溜めてきたんだろうな…