Chat Noir -バイオハザー度Max-
黒猫は大きな目をぱちぱちさせてちょっと考えるように首を捻ると、
「居づらくなくても家出してきていー?」
とこれまた可愛い笑顔でにこにこ聞いてくる。
「ダメ」
「えー。ケチー」
ケチ…ってね。
ってかこの様子じゃ新しい母親とそりが合わなくて~なんて考え込むことないな。
てか、酔っ払い黒猫め。
私のバイオハザード危険レベルをあげやがって。
前のバイトがら陽気になったり泣き出したり絡んできたり寝ちゃったりする人はたくさん知ってるケド
こんなに可愛い酔っぱらいてのははじめて見た。
いつもどこか冷めた目でツンツンしてるネコなのに、
今日はごろごろ喉をならして私に擦り寄ってくる可愛いネコ。
そのネコは私に前脚…もとい腕を絡ませたまま、私の肩に頭を置いて急に静かになって動かなくなった。
もしかして寝ちゃったかと思ったけど、黒猫は前を向いたまま目をぱっちり開けていて、テーブルの隅をじっと見つめていた。
どうしちゃったんだろう…そう思っていると
「親父はさ……」
黒猫はまたも持ち前のマイペースで話しはじめた。
さっきはふわふわ可愛かったのに、今は真面目な視線。
「若い女、恋人にしてさっさと子供つくって、
俺の気持ちなんて無視で、朝都まで巻き込んで勝手に結婚決めて
いい加減なヤツだと思ってた。そんな父親みたいになりたくなくて
そんな親父がムカついて
でも
もっとムカつくのは俺自身」
え―――……?
「こうなって気付いたけど、俺、母親の顔が思い出せないんだ。
どうゆう人だったのか、声はどんな風だったとか
…どうやって触れてくれた…とか。
痛い思いして産んでくれたってのに、たくさん愛情を注いでもらったはずなのに…
俺ってサイテー」