Chat Noir -バイオハザー度Max-
黒猫に朝ごはん(味噌汁だけ)を食べさせて、私たちはまたも朝の町を手を繋いで駅まで向かった。
なんかなぁ。
黒猫を朝帰りさせるのはこれで二回目だって言うのに、二回とも未遂って…
でも
私の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれる黒猫を見上げて、
ゆっくり進むのもいいかな。
そう思ったんだ。
――――
―
今日の講義は2時限目から。あいた90分を私は研究室で過ごすことにした。
「おはよう、やぁ早いね真田くん」
と顔を出したのは、この二宮研の二宮教授。御歳62歳。
私も含めてこの研究室の生徒たちは、彼のことを裏で「カーネル教授」と呼んでいる。
だってそっくりなんだもん。
ケンタッキーのカーネルおじさんに。
「おはようございます、教授。新しい研究を思いついたので」
私は顕微鏡にセットしたプレパラートを取り上げて教授に見せた。
薄いカバーガラスの下には黒猫の髪が。
「細胞病理とはちょっと路線がずれてますが、これは私の興味なので。
育毛剤なんかの薬は多数開発されてますが、白髪予防の薬類はまだですよね。
この黒い髪を研究して新たなる薬を開発できたら、と
まずはこの髪の成分が…」
私がつらつらと説明をすると、
「…ああ、うん…分かったよ。是非がんばりたまえ」
教授は私の説明を途中で遮り、おおらかに笑って、あごひげを一なぞり。
カーネル教授は短めの腕を後ろで組んでのんびりと研究室を出て行った。
教授のお許しも出たわけ(と言うか途中で説明を聞くのが面倒になっただけ)だし、よしっ!
気合いを入れて顕微鏡を覗き込む。
黒猫の髪……
「キューティクルがつやつや!
しかも毛先がちょっとくるんってなってる!」
毛先まで可愛いヤツ。
と、またもバイオハザードウィルスが私の仕事を邪魔する。
黒猫の髪よりもこの変態ウィルスを先にどうにかしないと!と腕を組んでいると、
「朝都、居る~?」
涼子が顔を出した。