Chat Noir -バイオハザー度Max-
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「溝口さんから逃げてる??」
あれから涼子は溝口さんに告白の返事もせずに彼を避けて逃げ回っているらしい。
どうやら昨日も私と黒猫が食事中のとき、涼子のケータイに溝口さんから電話があったようだ。
でもその電話を無視してしまったみたい。
「……うん。無駄に返事を引き延ばすのは良くないって分かってるんだけど。
どう返事していいのか…」
涼子はきれいにマスカラが乗った睫をまばたきながら俯いた。
「好きか嫌いかぐらいは分からないの?」
ちょっと聞いてみると、
「……分かんない。面白いし嫌いじゃないと思う。だけど好きかって聞かれたら、答えられない。
てかあの人彼女居たんじゃないの?」
私も頬杖をついてため息をついた。
「彼女?さあ。そこまで個人的なこと話したことないから知らないや」
涼子のこと好き好きオーラが出てたから、てっきり居ないのかと思ってたけど。
好きか嫌いか。
感情は二つに分けられるけど、恋愛感情はそう単純じゃない。
白か黒かはっきりさせられないのが厄介だ。
人間て複雑。
「だけど返事もせずに逃げ回ってるのは良くないよ。
考えるにも溝口さんにそのこと伝えないと、彼だって前に進めないよ」
私がアドバイスすると、
「それは分かってるんだけどね…」
涼子は再びため息。
「朝都はさ?黒猫くんに告白されて、すぐ答えが出せたけど私には無理……
意識してなかった人が急にそうゆう対象になって戸惑ってる」
Yes or No ??
答えは単純だけど、私だってそんなに単純に答えを出したわけではない。
私は
黒猫のあの告白に一瞬にして恋に堕ちたから―――
「いいよ」じゃなくて
「好き」だったんだ。