Chat Noir -バイオハザー度Max-
「結局悩んでも答えが出てこなかった↓↓」
午後の講義を終えて私は広い講義室の机に一人がくりと突っ伏した。
そもそも私の脳は医学以外の…特に苦手分野である“恋愛”に対応できる柔軟なものじゃないのだ。
しかも、黒猫が邪魔するから。
いっつも私の脳に無断に入り込んで、甘い鳴き声を鳴らしてじゃれてくる黒いネコ。
「かまって」と甘えられているようで、おずおずと手を差し伸べると私の差し出した指を、はしっと可愛い前脚ではさむ。
「つかまえたっ」
ええ、捕まえられましたよ。
気持ちごと。
なんて危ない妄想をしていると、
「朝都、ちょっといいか?」
浩一に声を掛けられて私は顔を上げた。
「おー。珍しいじゃん、あんたこの講義取ってったっけ?」
「…いや。とってねぇけど、ちょっとお前に話したいことがあって」
浩一は言い辛そうにして、講義室の出入り口を目配せする。
「話したいことって何?ここじゃだめなの?」
「………ここじゃちょっと…」
浩一は真剣な顔で私を見下ろしてきて、私は目をぱちぱち。
ここじゃ話せない話って何なのよ。私は今溝口さんと涼子のことを考えることで精一杯なの。
そう考えてると、
「朝都~、下にお客さんだよ。呼んできてって言われた。結構なイケメンだよ♪」
同じ講義をとっていた女の子に呼ばれて私は目をぱちぱち。
イケメン…?ああ、溝口さんか…
噂をすればなんとやら、だな。
でも溝口さんが研究棟じゃなくて、講義が行われるこの広いA棟に来るのは珍しいことだ。
今日頼んだ麻酔薬を納品に来たのかな。
それなら研究室に届けてくれればいいのに。
それとも
黒猫??
なんてね。
一回会いに来たからそんな考え浮かんじゃったけど、早々大学に高校生が侵入できるわけでもないよね。
さっきまで黒猫のことを考えていたからだろうか。
もう会いたくなっちゃったり。