Chat Noir -バイオハザー度Max-
安心して気が緩んだって言うのかな…
ひたすらに涙を零している私の頬にそっと手を置き、黒猫がちょっと眉を下げてぎこちなく笑う。
「どうした?―――何か、あった?」
いつなにく優しく聞かれて私は目をまばたいた。
何か―――…
浩一の顔が浮かんで、私は慌てて顔を振ると
「な、なんにもない。話があるって言うからちょっと心配になって
ま、待たせてごめんね、ってこと」
ふわっ
黒猫は私の頭を優しく撫でると、
「ばか朝都ー。
そんなことで泣くとか」
と、またも悪戯ぽく笑う。
またバカとか…
あんた年上のおねーさまに向かって“バカ”言い過ぎ。
「でも
ごめんな?
心配させて」
黒猫はぎこちなく笑って、私の頭を抱き寄せた。
それはさっき浩一に抱き寄せられたときの感触とまったく違う。
高校の制服からはおひさまの香り―――
ぎゅっ
私は黒猫の背中をぎゅっと握って抱きしめ返した。
ふっと顔を上げると、向こう側のホームでは白衣を着たままの浩一が慌てたようにきょろきょろとあたりを見渡していた。
浩一……―――
さっきの話の続きをしようと追いかけてきたのだろうか…
浩一は私と目が合うと驚いたように目を開く。
ぎゅっ
視界を遮るように隠すように、私をさらに強く抱き寄せる黒猫。
ちょっと気になって黒猫を見上げると
黒猫も浩一の存在には気付いていたのだろうか、真剣な眼差しで―――向かい側の浩一を射るように見据えていた。