Chat Noir -バイオハザー度Max-
『間もなく2番ホームに電車が参ります』
場内アナウンスが流れて、私はぐいと黒猫に手を引かれた。
「行こ」
流れるように到着した電車の扉が開いて、黒猫が促す。
私は何も言わずに無言でちょっと頷くと、俯きながら電車の中に入った。
窓から見えた―――
浩一の顔。
浩一が何かを言いかけて、私は思わず窓に手をついた。
「浩一……」
ごめんね。
私は―――浩一のこと男として見れない…
電車が発車して浩一が遠ざかる。
浩一は遠ざかるこっち側の電車を追いかけるようにいつまでも顔をこちらに向けていた。
―――
―
電車の中で並んで座っても黒猫は押し黙ったまま腕を組んでいる。
なんとなく流れで手を繋いで二人で黒猫のおうちに帰るときも
私たちは一言も交わさず。
おうちに帰ると黒猫はコーヒーを準備してくれた。
コーヒー豆が入った缶を手にしながらちょっと迷ったように首を捻ると、ウィスキーのボトルを手に持って
「どっちがいい?」
と真顔で聞いてくる。
いつも通りの黒猫に、
「コーヒーに決まってンでしょ!」私もいつも通り。
PPPP
「あ、メールだ」
黒猫は私の意見を聞いていないのかマイペースにケータイを鞄から取り出している。
聞こうよ、私の話。
と思ってるとき、ふいに黒猫のケータイに目がいった。
私があげたマウスのおしり…シッポの付け根にちっちゃい青いリボンがついている。
あれ??
あげたときリボンなんてついてたっけ??
「あ、これ?こないだ食った魚ビスケットについてたリボン」
「まさかそれあんたが縫い付けたの?」
意外な特技??
黒猫……謎過ぎる…
「まさか。亮太がくっつけた」
トラネコリョータくんが!?
…あの子も謎ね。