Chat Noir -バイオハザー度Max-
「ち、違います!」
「違います」
「溝口て誰~?」
私と黒猫、そしてトラネコくんが同じタイミングで声を発して私たち三人は思わず顔を合わせた。
製薬会社のおねーさんは、ふっと吐息を吐いて
「隠さなくていいわ。彼に伝えてちょうだい。
『どんな手を使ったか知らないけれど、次はないからね』
って」
次は―――…?
無表情に一言言うと私の手から拾い集めたファイルを奪うように取り返し、颯爽と歩いていってしまった。
「何あれ。拾ってやったのに礼もなしかよ。
ケバいし。嫌いな匂い」
と黒猫が製薬会社のおねーさんをちょっと睨みながら声を低める。
匂いって……香水のことかな。
確かにちょっと強めだった。
トラネコくんも立ち上がり、
「可愛くない女」
ロシアン葵ちゃんのことを語るときと同じ表情、同じ口調で呟いて
トラネコくんはポケットに手を入れる。
ま、まぁ?確かに…態度はよろしくないかも。
でも
彼女の言葉を聞いて
溝口さん契約を取れた―――…?
とちょっと目をまばたいた。