Chat Noir -バイオハザー度Max-
「どうして?俺の番号削除したんじゃないの?」
黒猫は忙しなく目をまばたいて額に手をやり部屋の中をいったりきたりしている。
それでも私の見えない場所まで移動していく風ではなく、それだけが救いだった。
ロシアン葵ちゃんが何か言ったのか黒猫はちょっと考えるように俯いて眉根を寄せる。
「てか俺…今、彼女と居るんだワ。
悪いケド
もう掛けてこないで」
拒絶するようにそう言い切った黒猫はどこか冷たい表情と声で、その聞き慣れない話し方に何故かビクリと私の肩が震えた。
それでも最後に
「――――…ごめん」と付け加えたのは、ほんの少し残った愛情なのだろうか。
黒猫は無表情に通話を切ってケータイを机の上に投げ出した。
「―――はぁー…」
深くため息をつき、椅子に深く背を預けて黒猫は足を投げ出した。
「ろ…ロシアン葵ちゃんは何て…?」
気になって思わず聞くと、一気に疲れた表情をした黒猫は目だけを上げて、だけどすぐに無邪気な笑みを浮かべた。
「また勝手にあだ名付けたの?」
「ろ…ロシアンブルーみたいだったから」
「あー…それで…」
黒猫は少し考えるように頭を後ろに逸らし、喉を反らせると
「なんかー……会いたいとか言われちゃってさ。
何で今更…?」
上を向いたままポツリと呟いた。
え―――……会いたい?
「てかホントあいつ変わってねー。気まぐれで自由なネコ。
ロシアンブルーもあながち外れてないかもな」