Chat Noir -バイオハザー度Max-
私をアパートまで送ってくれた黒猫は、アパートの前で
「じゃ、また明日ね」
と言って手を振って帰っていく。
女の独り暮らしだって知ってるくせに、「あがりたい」とは言わなかった。
「送ってくれたお礼にお茶でも」と一言も言いそびれた。
それぐらいあっさりと帰っていってしまったのだ。
私は両手を制服のズボンに突っ込んで帰っていく黒猫の姿をいつまでも―――見送っていた。
黒猫は
ふいに私の内側に入ったと思いきや、またもふっと居なくなる。
自由気まま。
マイペースなあいつにペースをかき乱される。
―――
次の日、またも私は(自分なりに)お洒落をして黒猫のおうちを訪れた。
今日はデートじゃないわよ?お勉強の日だから。
それでもやっぱりおうちに上がるときはきんちょー。
ちょっとドキドキしつつも、今日は黒猫もお昼寝中じゃなかったらしく、普通に扉を開けてくれた。
勉強の間にも黒猫はいつも以上にそっけなく大人しく机に向かって淡々と問題をこなしている。
私と黒猫の座っている椅子の距離は50cmぐらい。
その距離を開けることなく、詰めることなく淡々と。
何よ。
昨日はあんなに大胆だったのに。
今日は借りてきた猫みたいに大人しくしちゃって。
何よ。
期待した私がバカみたいじゃん。