Chat Noir -バイオハザー度Max-




その日は結局何もなく終わった。


当然といっちゃ当然か…


何せ目的はお勉強なわけで、私は家庭教師。黒猫は生徒。それ以上のレッスンはまずいっつぅの。


いつもより重い空気を引きずりながらも、黒猫はまたも律儀に私のアパートに送ってくれた。


「いいのに、まだ早い時間だから」


と言ったけれど、


「危ねぇって」と苦笑を浮かべる黒猫。


何となく笑顔がぎこちないのはきのせい?


この日も結局「あがっていく?」と一言を言い出せないまま、黒猫はアパートの前から立ち去っていった。



―――


「お付き合いがはじまって一週間以上経つのに、キスはおろか手を繋ぐこともまだ!」


例の如く、私の研究室には涼子がだべっている。


今日は大学の構内の畑で栽培したサツマイモ(遺伝子組み換え)を持ってきて、またも燃アルを入れたアルコールランプとビーカーでサツマイモを調理している。


いつも居る後輩君も、先輩の院生もいないからこんな話できるわけだけど。


「…そんなことどーでもいい。問題は私がそうしたいって思っちゃってるところなんだよね」


がくりとうな垂れてテーブルに突っ伏す。


黒猫とのお勉強の日から三日経った。


キスや手を繋ぐのはおろか、メールや電話だってこないし。


私は黒猫のことを考えたくなくて、ここ三日間卒業研究の論文発表と言う理由をつけて研究室にこもりきり。


ひたすらにラットやマウス相手に過ごしている。


お陰で教授におねだりした抗体は大いに役立っている。


「あんた寝てない?肌荒れひどいわよ?」


ビーカーに医療用メスで切ったサツマイモをビーカーに放り入れながら、涼子がちょっと心配そうに目をまばたいた。








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