Chat Noir -バイオハザー度Max-
「投入した抗体がマウスにどう変化が現れるのか気になって、付き切りだったから」
「呆れた。一回うちに帰りなさいよ。そんなんじゃ黒猫くんも呆れちゃうかもよ?」
「ダメ。一人になったら余計なこと考えちゃうもん」
マウスが居ても余計なことばっか考えちゃうんだけどね。
食欲もなくてコーヒーばかり飲んでいたのか、胃がキリキリと痛むし。
「はぁ~」盛大にため息を吐いたときだった。
「こんちは~っす!」
と軽い調子で製薬会社の営業のお兄さんがガラっと扉を開けた。
言うまでもなくあのマウスのストラップをくれたお兄さんで。
「あ、涼子さん!いらっしゃったんですか!!」
爽やかイケメンお兄さんは涼子がお気に入り。
女子力高い……と言うか超美人だからな、涼子は。
「ちょうど良かった溝口さん(製薬会社のお兄さんです)サツマイモゆでてるんですけど、ご一緒にどうですか?」
「マジっスか?それは是非!」
教授が居るときはそれなりにピシっとしているのに、相手が私たちだけだと知って随分とくだけた態度だ。
堅苦しいのは嫌いだからむしろこっちの方がいいけど。
「朝都さん、今日はご注文は?」
さりげにちゃっかりしてるし。
「教授から聞いてます。試薬なんですけど、アルミニウムトリイソプロポキシド,3N…」
教授から預かっている発注ノートを開いて、
「キャス№は……」
CAT №555-XX-X…
キャット!?
ーーー!!
ぐしゃっ
私は思わず製薬会社のお兄さんに顔面からノートをぶつけていた。
「こ、こここここここに!書いてあるんで、それをお願いします!!」