Chat Noir -バイオハザー度Max-
「……ホントごめん」
本気で苦しかったのか、震えている私の声を聞いて黒猫は
『分かった。お大事にな』と言って通話は終わった。
キリキリキリ…
「痛い痛い……」
この痛みは黒猫に「涼子がついててくれてる」ってウソついちゃったから、後ろめたさなのだろうか。
それとも何か他の理由―――…?
手を震わせてケータイをテーブルに置くと、
「あんた…そこ胃じゃなくて心臓……」
と目の前で呆れたように涼子がため息をついた。
胃じゃなくて―――胸が痛むの?私……
―――
どうやらバイオハザードレベルMAXの変態ウィルスは脳だけじゃなく心臓まで回っちゃったみたいだ。
『とにかくバイト断ったわけだし、今日は家に帰って大人しくしてな』
と半ば強引に涼子に帰された。
電車に揺られながら、前回黒猫と私のアパートに帰ったことを思い出す。
同じ時間帯。同じ電車の同じ車両。
黒猫……今頃なにやってるだろ…
勉強が無くなったからまたお昼寝かな。それともまたおうちを脱走して野良でもやってるのかな。
ガタンガタンと揺られて、カーブに差し掛かった。
車両が大きく揺れたけれど、私はふらつきもせずしっかりと両足を床につけていた。
今は支えてくれる黒猫が居ないんだから、しっかりしなきゃ
そう思って顔を上げると、遠くの方…隣の車両で見覚えのある黒いふわふわの頭の先が見えた。
へ―――……黒猫……