Chat Noir -バイオハザー度Max-
あとに残された私と黒猫。
「え…えっと…あがってく?」
ずっと言い出せなかった一言は、
何だか変なタイミングで、思いがけずあっさりと口から出た。
「うん」
黒猫は僅かに顔を逸らしながら、それでも大人しく扉の内側に入ってくる。
「一人暮らしの女の人の家にあがるのってはじめてでさ~
ちょっときんちょー」
黒猫は早口に言って首の後ろに手をやる。
黒い髪からちらりと見えた耳の先がほんのり色づいている。
黒猫の高い背の後ろについっていった私を黒猫が振り返ると、
「いや、変な意味じゃなくて…いや……変なことしようとか…
企んでないから。
わるさしようとか―――企んでないから」
真剣な顔で言うけど。
わるさって発想が―――いかにもネコっぽくて、私は全然危機感を感じなかった。
てかむしろわるさしてくれ。
って、またもバイオハザードの変態ウィルスに侵されてる私。
「柱で爪とぎさえしなきゃいいよ」
ちょっと笑うと、黒猫が安心したように頬を緩めた。
「何それ」