EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【オーレリアン編】

静理に睨まれて黙り込む。

とその時、居間にフェオドールとカロンが入ってきた。

「マドモアゼル、具合はどうだ?」

「できたぜー。りんごウサギ」

カロンがテーブルにコトリと皿を置く。

そこには定番のりんごで作ったウサギさんが乗っていた。

「上手いやつが俺作。こっちの形わりぃのがフェオのな」

ウサギさんの耳が欠けているのといないのとを指差してカロンが違いを強調。

上手くできた自分を褒めてくれと言うように、しゃがんで小鳥の顔を覗き込む。

「ありがとうございます…。カロンさん、フェオさん」

回らない頭で小鳥は無理に笑顔を作った。

「意外とフェオって不器用だね」

りんごを見つめて静理がボソリと呟く。

「………そんなことは」

「あるだろ。ヴァイオリン得意なくせに不器用だよな」

器用なカロンに言われてムッとなるフェオドール。

「演奏の上手さと器用さは比例しない」

こんな会話がなされている横でオーレリアンは静かに居間から出て行こうとした。

が、静理に見つかり声をかけられる。

「オーレリアン、明日、君が小鳥ちゃんに付き添うなら俺は行かないけれど…どうするんだい?」

オーレリアンは小鳥を見ずに俯き、しばし沈黙してから小さな声でこう言った。


「……静理に任す」


それだけ言うと早足で廊下へと出たのだった。






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