EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
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やみびと温泉。
それは地上のどこかにあるという闇人だけが入ることを許された秘境温泉だ。
「スタッフは全員闇人。ペットや家族に人間がいるならその場合に限り人間の宿泊も許可されるってさ。良かった、一緒に行けるね。僕のプリマドンナ」
チケットと一緒に貰ったパンフレットを読みながら白魔が言った。
「ちょっと、なんでお前が行くわけ?優勝したのは兄様なんだから兄様が行くべきでしょ」
創世祭が終わり一週間。
あの日からペアチケットを使って誰が小鳥と温泉に行くかで揉めていた。
「それについて考えていたんだけど……もう面倒だから全員で行かないかい?お金はジェラルドの財布から出すから、自腹を切れとは言わないよ」
なんとついにクラヴィエ家にて父親の財布を預かっている静理が太っ腹な提案をした。
それ程までに兄弟達の言い争いが彼にとって煩わしいものだったのだろう。
この発言のおかげで兄弟六人と小鳥がそろっていた居間はざわついた。
「マジで!?いいの!?」
「行くー。温泉」
「……ルカ、カロン。行きたいならテレビゲームをやめなさい」
フェオドールが注意するも、カロンはベッと舌を出す。
「明日から試験でしょ。お前らまた赤点取る気?」
オーレリアンが軽蔑した眼差しをテレビゲームに熱中している兄二人に向けた。
すると白魔がニッコリ笑顔でこの一言。
「こうしようか。赤点取った奴は自腹」
「勉強してきますっ!」
「静理ぃー、出るとこ教えて」
全力で部屋に戻るルカと、今更静理にテスト範囲を尋ねるカロン。
こんな光景を見てやれやれと苦笑いをした小鳥だった。