EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「つーか、何で俺達、闇人だってバレたわけ?誰か教えたか?」
意識不明のフェオドールを後部シートに引き寄せながら呑気な疑問を口に出すカロン。
静理はハンドルを切りつつ答えた。
「多分、奴らも俺達闇人に反応する特殊な機器を所持しているんだろうね。カロン、ちょっとこれを窓から後ろの車に向かって投げてくれないかな」
「ん?なんだこれ」
何気なく渡された手の平サイズの物を見つめてカロンは首を傾げる。
「上手く投げれば奴らの視界を遮って、追跡を不可能にしてくれる代物だよ」
後ろからパトカーで追いかけてくる吸血鬼駆逐部隊を静理はバックミラーで確認した。
「ゲームでよくあるあれか。戦闘離脱したい時に使う便利アイテム」
「まあ、似たようなものかな。理解したならさっさと投げて」
「んじゃあ、遠慮なく。ほいっと」
窓を開け、パトカーに向かって煙幕弾を投げつける。
そんなカロンを見ながらルカはどうして静理が煙幕弾を持っていたのか不思議に思ったが、オーレリアンと小鳥の会話が耳に入り、そっちに意識を向けた。
「オーレリアンさん、フェオさんはっ…フェオさんは大丈夫ですよね!?」
「頭撃たれてるだろ!大丈夫なわけあるか馬鹿!!」
「そんな…!?」
涙目になる小鳥。
オーレリアンはフェオドールの応急手当をしながらハッキリ言った。
「泣くなよ!兄様を死なせはしないから!」
「は、はい…」
「とりあえず地下に戻ったら病院だね。静理、もっと飛ばしてあげなよ。フェオドール死ぬよ?」
白魔に急かされ静理が更にアクセルを踏み込む。
パトカーには煙幕が効いたのか、後方の車はミラーに映らなくなった。
(フェオさん…!)
予想もしなかった、闇人に対する奇襲。
小鳥は地下に戻るまでフェオドールが死なないよう祈ることしかできなかった。