EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
頭部に怪我をしたフェオドールはそれによって一部の記憶を失ってしまったらしい。
日常生活は今まで通り問題なく送れるが、周りの人々、そして自分に関しての記憶を一切思い出せないまま数日が経った。
「医者はお手上げだと。酷いもんだぜ、ヤブしかいねー」
兄弟達が揃っている居間にて、カロンが静理にこっそり愚痴をぶつける。
すると静理は最もな意見を返した。
「仕方ないよ。そもそもヤブじゃない医者を探す方が大変なんだからね」
「でも傷はだいぶ良くなってきました。それだけでも……嬉しいです」
「小鳥ちゃん……君って子は…」
静理は憐憫の色を滲ませた瞳で、強がっている小鳥を見つめた。
「泣きそうな顔して何が“嬉しいです”だ。嘘つき小動物」
カロンも察していたのか、元気付けるように小鳥の頭をわしゃわしゃ撫で回す。
髪が乱れたが、小鳥は心に温かいものを感じてその行為を大人しく受け入れた。
と、そこへ。
「マドモアゼルになんてことをするんだ。ああ……綺麗な髪が、お前のせいでこんなことに…」