EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
ソファーに腰掛けていた小鳥の隣に座ってフェオドールが優しく髪を直してくれる。
記憶を失おうとも彼なのだと、小鳥はフェオドールのこういう行動から安心を見出だしていた。
「記憶吹っ飛んでもフェオはやっぱりフェオだよな」
そう呟いたルカも小鳥と同じ考えらしい。
「もしこのまま俺達のこと思い出さなくてもフェオは何も変わらない気がする…」
「なんだよそれ。兄様が僕達との過去を忘れたままで良いっていうのか?ふざけるなよ。僕はそんなのごめんだ」
「オーレリアンに一票。何も変わらないだなんて虚言だよ、ルカ」
白魔はいつになく真面目な表情で問題点を指摘した。
「フェオドール、ヴァイオリンが全く弾けなくなってるんだ」
衝撃が走った。
全員が初耳だったらしく、皆それぞれ目を丸くする。
「嘘だろマジかよ!?」
「大マジだよ、ルカ。昨日、試しに弾かせてみたんだけど…それは悲惨なものだったさ」
「そんな……あんなに上手だったのに…信じられません!」
思わず声を荒げた小鳥を当のフェオドールは不思議そうに首を傾げて見つめた。
「信じられないってさ。僕のプリマドンナのためにもう一回、醜態曝してみせてよ」
「お、俺っ、ヴァイオリン取ってくる!」
ルカが立ち上がり居間を出た。
「それが事実ならフェオは当分、演奏活動中止だね」
静理が現実的問題を口にする。