EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「ヴァイオリンがボロクソなフェオとか……ハハッ、笑える」
「カロン!」
ギロリとカロンを睨むオーレリアン。
そうこうしているうちにルカが走って戻ってきた。
バンッとうるさく居間の扉を押し退ける彼の腕には、フェオドールのヴァイオリンケースが。
「さあ、フェオドール。弾いて」
白魔に促され、フェオドールは自分のヴァイオリンを見つめた。
しばし動かずにいた彼だが、徐にケースの中から仕事の相棒を取り出し、慣れた動作で構える。
(あ、いつものフェオさんだ)
その様子は小鳥から見たら普段の彼となんら変わりない。
構えた後には彼の指先や手が美しい音色を奏でるのだ。
それを十分に知っている小鳥は次の瞬間、その楽器から発せられた音に耳を疑った。
ーーギィーッ
ーーキィィー…
少し掠れた不快な響き。
そこに音楽的要素は全くなかった。
「うわ…これは確かに……マズイね」
「静理、もっとハッキリ言ってやれよ。大惨事だって」
これ以上、頭に響く不快な音は聴きたくないと、自分の耳に指を突っ込んだカロンが「大惨事」発言の後、更にこう言った。