EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
この屋敷の中の記憶もあやふやなはずなのに、なぜだか自分の花園へは迷うことなく辿り着くことができた。
フェオドールはそこで一人、花に囲まれ思考する。
(俺は一体……何を忘れてしまったんだ…?)
苛立ちではなく、それは純粋な疑問だった。
「ヴァイオリンが弾けるらしいんだが……本当なのか?」
視界に入った赤薔薇に囁きかけるも、当然返事は返ってこない。
「それに……」
自分のフィアンセだと紹介された彼女のことを思い出す。
「あの子に、どんなふうに接すればいい…?わからないんだ…。教えてくれ…」
ひっそりとフェオドールを見守る青薔薇に問い掛けてみるも、答えは得られるはずもない。
「あんな顔をさせてしまうくらいなら…俺はずっと眠っていた方が良かったのか…」
中途半端な今の状態よりも、覚めることのない眠りについていて方がーー。
「…フフッ……ハハ」
そこまで考えて、彼は自嘲気味に笑った。