EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
緊張のあまり手にしていた青薔薇をギュッと握り締めた瞬間、刺が指に刺さったようだ。
小鳥は傷を確認するため自分の指を見た。
(良かった…。ちょっと血が出ただけみたい)
変に刺が食い込んだわけではなさそうでホッとする。
傷口を綺麗にして絆創膏を貼っておけば問題ないだろう。
そう考えつつ顔を上げた小鳥は、この時、フェオドールの様子がおかしいことに気がついた。
「フェオさん…?」
ギラリ、と欲深に輝く彼の瞳。
何かを堪えるように口元を手で押さえ、必死に理性と戦っている様子のフェオドール。
彼の表情には困惑が見られた。
「……ハァ……ハァッ」
フェオドールの息が荒い。
「フェオさん大丈夫ですか!?どうしたんですか!?」
いきなり様子が変になった彼を心配して顔を覗き込もうとした小鳥だったが、何を考えたのかフェオドールが一歩下がり小鳥から距離を取った。
「……来ないで、くれ…」
「え…」
「君の、香りが……」
「私の、香り?」
何のことだろうと首を傾げたのも一瞬、小鳥はすぐに察した。
「私の香りって…血のことですか?」
「……ああ。危険だ。……酷く誘惑される」