EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「フェオってね、昔、ヴァイオリン一つ持ってヨーロッパを旅してたことがあったんだよ」
「その時、たまたま私達の楽団と出会ったんですよね。あそこも酒場でした」
小鳥はセルトの「楽団」という言葉に反応した。
「楽団…?」
「……セルトもミロも、昔はジプシー楽団にいたんだ。俺が彼らの音楽に惚れて一緒にいるようになった」
諦めたのか、自ら過去を話し始めたフェオドール。
「ジプシー楽団!?じゃあ、お二人共、フェオさんみたいに演奏活動していたんですか?」
「うん。僕はターロガトー吹いてた。セルトはツィンバロムだよね。今も気が向いた時だけ一緒に演奏するんだ~。あ、良かったら吹いてあげよっか?セルト、僕の楽器ちょうだい」
「向こうにありますよ」
セルトが店内の隅を指差した。
そのスペースには客用のテーブルがなく、いくつか楽器が置いてある。
ミロスラフはガタリと席を立ってそちらに近づいた。
「てかこの際、フェオもセルトもやろうよ!久々に」
「トリオか…」
ターロガトーをケースから出して準備する友人を見ながらフェオドールは考える。