EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】

「聴きたい…?」

確認するようにフェオドールは小鳥の顔を覗き込んだ。

「いつもの演奏より、かなり粗野なものになると思うけど…」

「え…と…」

そう言われてもどんなものかわからない小鳥は返事に困る。

フェオドールはもっと具体的に説明しようと試みた。

「……白魔に低俗だと言われた」

「えっ!?そうなんですか!?」

「フェオの兄ちゃんもヒドイこと言うよねー。確かに大衆音楽だけどさ、低俗の一言で片付けるなっての」

ミロスラフがプンプン怒って文句を言っていたその時、店の扉が開き客が来店。

そちらを見たセルトが嬉しげな声を上げる。

「ああ、いらっしゃいませ!久しぶりですね、漣(さざなみ)」

「おー、来てやったぞ。有り難く思え」

見覚えのある黒髪の青年。

小鳥は記憶を探ってハッとした。

「お化け屋敷で会った人!?」

「ん?貴様、クラヴィエ家の…。ほう、フェオと一緒か」

お化け屋敷で出会った軍学校の生徒の一人、漣。

彼はカウンターに近寄ると親しげにフェオドールを見た。

「マドモアゼル、漣を知っているのか…?」

「はい。遊園地のお化け屋敷で…その…」

「俺様が手を舐めてやった」


< 29 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop