EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「なんの曲やるんだ~?」
周りにいる客達が四人に注目し始めた。
それに答えるのはチェロを抱えた俺様な漣だ。
「チャールダーシュだ。踊れ野郎共!」
「踊れってもカップルダンスだろ~。女がいねー!」
「ん?一人いるじゃねーか」
客の声に小鳥がビクリと反応する。
(それって、私のことだよね…?)
自分の方に集中している視線が嫌でもわかり顔を青くしていると、フェオドールの手が小鳥の肩を抱いた。
そして牽制するように彼は客達をギロリと睨む。
「こいつと踊ろうなんざ一億年早いんだよ馬鹿共が!ってフェオが言ってるぞ。やめとけ貴様ら」
友の無言の中身を代弁する漣。
それを聞いた客からは「桑原、桑原」と言う声が。
「……漣、俺はそんなこと思ってない」
「嘘つけ。なら何を考えていた?」
「マドモアゼルに触ろうなんて百億年早い愚者共が」
「ほぼ同じだろ阿呆」
とその時、ソプラノサックスの音が響いた。
「ほら~、始めるよ~」
どうやらミロスラフが吹いたターロガトーの音らしい。
(あれがミロさんの楽器…。あれも初めて見るかも)
見た目は木製のクラリネットだが、音はソプラノサックスに近いから不思議だ。