EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「ここにいて」
そう囁いてからフェオドールは仲間の方に近寄った。
小鳥がいるカウンターと演奏する位置はあまり離れていないが、一人残されてちょっぴり心細い。
小鳥が不安げにフェオドールを見つめていると、不意に目が合いニコリと微笑まれた。
(なんだか、安心してって言われたみたい)
小鳥が微笑み返した時、漣の合図で演奏がスタート。
フェオドールのヴァイオリンが主旋律となりチャールダーシュが始まる。
ゆったりと流れるような出だしは哀愁漂う短調だ。
(フェオさん、粗野って言ってたけど、とっても綺麗なメロディーだなぁ)
聞き惚れていると、チェロを弾いている漣が演奏中にしゃべり出した。
「まずは俺様だ」
「どうぞ」
セルトがニコニコしながら許可を出す。
すると主旋律がフェオドールから漣に交替した。
ヴァイオリンがベースに回りチェロがメロディーラインを奏で始める。
同じ旋律の繰り返しなのだが、主役の楽器が入れ替わることで曲の雰囲気がガラリと変わった。
しかも出だしより徐々にテンポが速くなっている。
始めのゆったりさはどこへやら、プレストを目指した激しい演奏だ。