EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
軽やかな音を響かせるフェオドールのヴァイオリン。
その演奏技術も素晴らしいが、小鳥は音色よりも彼の表情に見惚れた。
(フェオさんが…すごく楽しそうに笑ってる…)
無邪気、という言葉が似合うだろうか。
仲間と奏でるアンサンブルが楽しくて仕方ない、といった様子だ。
(さっき会場で演奏してた時は大人っぽくてドキドキしたけど…今はちょっと子供みたいで可愛い…かな?)
それに、緊張なんてカケラも感じていない今の方がより生き生きして見える。
無表情が多いフェオドールの貴重な一面だ。
「次で終わらせる」
フェオドールの一言で速さが更に増した。
ラストスパートを駆け抜け、華やかに終わる。
音が弾(はじ)けた。
「楽しい~!」
笑顔で叫ぶミロスラフ。
「ああ。やっぱり、こういう演奏の方が楽しいな」
カウンターに戻って来たフェオドールも息を弾ませている。
聴衆が拍手を送るのに合わせて小鳥も手を叩き、彼を迎えた。
「お疲れ様です!ステキな演奏でした!」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい」
「楽譜もないのに…皆さんスゴイですね」
感心している小鳥にミロスラフがカラカラ笑いながら近寄る。
「そりゃねー。楽譜なんて読めないもん」