EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「え、読めない…?」
そんな馬鹿な、とでも言いたげな小鳥。
フェオドールは楽器を片付けながら説明した。
「ミロやセルトが親しんできた音楽は楽譜がないんだ。家族や師匠が奏でる音を耳で聴いて、覚えて真似る」
「だから楽譜に馴染みないんだよね~」
「その代わり、耳が良いんですよ」
カウンターに戻って来たセルトも会話に加わる。
「ちょっと耳にしたメロディーでもすぐ吹いてしまうんですよね」
すると漣がフェオドールの隣にドカリと腰掛けた。
「そのくらい俺様もできるぞ。セルト、酒くれ。いつもの」
「はい、かしこまりました」
「……俺も、追加」
グラスの中身を一気に飲み干してフェオドールもオーダー。
「お、フェオ飲むね~」
「タダらしいからな。飲まないと損する」
ミロスラフに答えながら飲む気満々。
フェオドールは悪戯っぽい笑みを浮かべて小鳥にも遠慮するなと告げた。
「好きなだけ飲んで」
「は、はい」
「オレンジ以外にもリンゴとか桃もありますよ。いかがですか?」
セルトに勧められ小鳥も違うジュースを注文。
フェオドールが飲み潰れるまで付き合った。