EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
見てはいけないものを見てしまったのだろうか。
わからない。
しかもオーレリアンから聞かされてすぐのことだったため、過敏になっている小鳥の心にその光景は深く突き刺さった。
嫌な汗が滲む。
喉が異様に渇いた。
「おいメスブタ!兄様を追いかけるぞ」
オーレリアンが小鳥の手を引き駆け出す。
「あっ…」
引かれるままに小鳥も走った。
フェオドールに気づかれないよう、距離を保ちながら後をつける。
オーレリアンが積極的に尾行し、二人は駅から出て街中へと入った。
(ここ…前にも来たような…)
数分後、暗くて汚い裏通りに辿り着いた小鳥は見覚えのある寂れたビルや住居を視界に捉え、辺りをキョロキョロ見回した。
「あ!店に入った」
オーレリアンが小声で告げる。
小鳥もそちらを見ると、フェオドールと女性があの居酒屋「狂詩曲(ラプソディー)」に消えるところだった。
「よし。兄様が座ったら僕達も行くぞ」
「え!中に入るんですか!?」
「当たり前だろ。何のためにここまで来たんだよ」
小鳥も中の二人が気にならないわけではない。
様子をうかがえるならば是非そうしたいものだ。
「…わかりました」
「ならいい。ほら、行くぞ」
オーレリアンの強引さに今は感謝したい小鳥だった。