EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
あまり目立たないよう、そっと店内へ。
店の中は以前よりも混み合っていて、もうカウンター席しか空いていなかった。
「兄様はあっちの隅にいる。気づかれるなよ」
囁きながらカウンター席へ小鳥を導くオーレリアン。
小鳥が座った場所からはフェオドールの背中が見えた。
テーブル席の二人は酒を注文して親しげに話している。
時たま見える相手女性の笑顔が小鳥の胸を更にジクリと蝕んだ。
(何、話してるのかな…?)
とても楽しげな彼らを見ているのがツライ。
小鳥は視線を下げた。
「あの女…前にも見たことある」
ふと、オーレリアンが呟く。
「え…それって…フェオさんの、元カノさん…?」
「違う。兄様の恋人にあんな女いなかった。恋人じゃなくて…その……」
言葉を濁すオーレリアンに小鳥はせがむような眼差しを向けた。
それを見てオーレリアンは溜息をつく。
「……ハッキリ言ってやろうか」
「…お願いします」
小鳥の震える声に気づかない振りをして、オーレリアンは言った。
「あれ、兄様の不倫相手」