EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「ふ…りん…?」
単語を理解するのに少し時間がかかる。
小鳥は動揺した、泣きそうな瞳でオーレリアンを見つめた。
「本、当…?」
「……あの女は人妻だって、前に言ってた。兄様が」
今にもくしゃりと歪みそうな表情をしている小鳥に、オーレリアンは同情する。
「そんな落ち込むなよ…。あの女だけじゃないんだ。兄様はちょくちょく違う女と関係を持ってる。どうせ今日も奥に引っ込むだろうし」
「引っ込む…?」
「この店、ラブホも兼ねてるから」
「ええ!?」
「しっ!大声出すな馬鹿!兄様の耳に入る!」
「ご、ごめんなさい…」
チラリとテーブル席を確認する。
フェオドールはこちらに背中を向けたまま。
どうやら気づかれてはいないようだ。
オーレリアンと一緒に小鳥も安堵する。
「……これは僕の勘だけどさ。多分、兄様は甘える相手が欲しいだけなんだと思う」
小鳥はゆっくりと隣のオーレリアンに視線を戻した。
「早く母様を亡くして…昔から兄様は甘えられる相手が少なかったんだ。僕やルカやカロンはそんな兄様に甘えてた。僕達の面倒を見て、支えになってくれる兄様に…」
そう薄々感づいていて、オーレリアンは今まで何もできなかった。
末っ子という立場では、兄の心の支えになるには不十分で――。
何もしてあげられなかった。
「きっと、兄様は今も…支えが欲しいだけなんだと思う。だから、女を誑かして遊んでるわけじゃない」
小鳥にわかって欲しくて熱を込めて話す。
聞きながら、小鳥はフェオドールと女性が席を立つのを見た。
オーレリアンが言った通り、店の奥にある個室へ消えていくのを、見た。