EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
そのまま車は走り出す。
無言が支配する車内。
ちゃんと座り直した小鳥は横にいるフェオドールの方を一切見なかった。
早く家に着けばいいのにと思いながら軽く目を閉じる。
すると、フェオドールの手が小鳥の頭を引き寄せた。
先程とは打って変わってその動作は優しい。
「眠るといい…。着いたら起こすから」
彼の肩に頭をもたせ掛けることを許され、小鳥は再び目を閉じる。
抵抗するのも馬鹿らしいではないか。
しばらくそうしていると本当に眠くなってきて、小鳥は意識を手放そうとした。
「君は……」
うとうとしながら耳に入る、フェオドールの声。
それはいつもの甘やかな声じゃない。
「オーレリアンのことが……好きになったのか…?」
心の闇を孕んだ低い声。
彼はきっと既に小鳥が寝ていると思って口火を切ったのだろう。
しかし――。
「ふぇおさんの…ばかぁ…」
小鳥の目尻からぽろぽろと涙が零れた。
夢と現の狭間で囁いた言葉がフェオドールに届いたかはわからない。
彼の反応を見る前に小鳥は眠りに落ちた。