EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「着いたら起こす」だなんて、フェオドールは嘘つきだ。
そう思いながら小鳥は自室の柩から起き上がった。
(ここまで運んでくれたの、フェオさんだよね…)
今の今まで眠っていた小鳥はボンヤリする頭を押さえた。
今日の出来事を思い出し、また心が闇に覆われる。
(ああ……バカだな…私)
泣いてしまった。
フェオドールが女性と個室に消えた後、みっともなくボロボロと。
オーレリアンがあわあわしながらぎこちなく頭を撫でてくれたのを覚えてる。
(フェオさんは大人だから…そういう相手がいても、おかしくないのに…)
本音を言えば知りたくなかった。
けれど、何も知らないままフェオドールの傍にいる方がよっぽど恥ずかしいような気がした。
(しかも私…ムカついた…)
相手の女性に、というよりもフェオドールに。
(フェオさんがもっと地味で目立たない人なら良かったのに…)
儚げで美しいその横顔がガラス細工のように壊れやすく見えてしまう人だから、女性達が母性本能をくすぐられ惹かれるのだ。
(嫌になるくらいフェオさんが好きって気づかされた…。悔しい)
きっと小鳥の苛立ちや悲しみ、自己嫌悪などフェオドールは知らないだろう。
大人の余裕で気楽に構えているに違いない。
そう、小鳥は考えてしまう。