EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
その日、小鳥が再び眠りについた時、彼女の部屋の鏡が静かに動いた。
それはフェオドールの花園へと繋がる扉でもある。
キィと控えめに音が鳴ったが、小鳥に起きる様子はなかった。
「……」
無言でゆっくりと柩に近づく。
今、小鳥が目を開ければ彼の明るい金髪が暗闇の中に見えただろう。
しかし、眠り姫は眠ったまま。
規則的な寝息を聞きながらフェオドールは指先でそっと彼女の目尻に触れた。
「……また、泣いていたのか」
乾いた涙の跡。
ギリリと胸を締め付ける。
「俺の前では…泣かないのか」
酒場で泣いたということはオーレリアンの前で泣き顔を曝したはずだ。
フィアンセなんて肩書きだけ、少しも信頼されていないと言われているようでフェオドールの焦りは募る。
指先が頬を撫で、やがて小鳥の唇に達した。
「小鳥…」
ふわりと――。
蝶が花に口づけるように。
柔らかい頬を両手で包み込み唇を重ねれば、愛おしさが溢れてフェオドールの欲望を揺さ振った。