EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】




「フェオさん…!?」

触れられたような気がして飛び起きる。

夢の中でフェオドールを見たせいか、今の小鳥は現実とそれをごっちゃにしているらしい。

自分の部屋をキョロキョロ見回してもフェオドールの姿はなかった。


(夢、か…)


妙にリアル過ぎて身体が熱い。


(そうだよね…。キスされるなんて……夢じゃなきゃ有り得ないよね)


唇に残っている感触が生々しいのは気のせいか。

自分しかいない室内でハァと悩ましげな吐息を零す。

すると、シーツに触れていた手が何かに当たった。

「え?」

驚いてその「何か」を拾い上げる。

「これ……お花?」

慌てて電気をつけて確認すると、それは一輪の青薔薇だった。

「フェオさん…!やっぱり、来たの…?」

青薔薇が一人でここまで歩いて来るはずがない。

誰かが持って来たのならば、この屋敷でそんなことをするのはフェオドールしかいないだろう。

「フェオさん…」

なんのために置いていったのだろうか。

やはり先程のキスは夢じゃないのか。

色々思いながら薔薇を嗅ぐ。

嗚呼、彼の香りだ――と、小鳥はまた泣きそうになった。






< 60 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop