EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「大丈夫」
椅子から立ち上がり、小鳥に近づく。
「お前なら渡せる。兄様だって、受け取ってくれる」
「オーレリアンさん…」
「しっかりしろよ。お前らしくないぞ。気持ち悪い」
オーレリアンは小鳥の頬をむぎゅっと摘んだ。
「お前はへらへら笑ってるくらいで丁度良いんだから」
「い、いひゃい…」
「ん?痛い?なら自力で笑顔作れよ。今日は兄様の誕生日なんだぞ!」
笑え。
そう言って元気付けようとしてくれるオーレリアンのおかげで、小鳥は自分の心が温かくなるのを感じた。
俯き加減だった気持ちがやっと前を向く。
「ありがとう、ございます…」
手を離されてから小鳥はいつもの笑顔でお礼を言った。
「お前って扱いやすいな。単純馬鹿」
「なっ…!単純馬鹿はヒドイです」
「ハハッ、褒めたんだよ」
フェオドールの誕生日だからか、オーレリアンは機嫌が良いらしい。
いつもは見せないレアな笑顔を見せてくれた。
(わあ…!オーレリアンさんが可愛く笑ったぁ!)
内心ドキドキして見惚れていると――カチャリ。
キッチンの扉が開く控えめな音が聞こえた。
二人でそちらを向けば、そこには息を呑んだ表情のフェオドールが。
「あっ!兄様!」
「フェオさん…」
「………」
呼び掛けるも、フェオドールは気まずそうに顔を背け、中に入ることなくそっと扉を閉めて行ってしまった。
「兄様…なんか様子が変だ…。ちょっと行ってくる」
オーレリアンが追いかけるのを見送りながら、小鳥はまた不安に駆られる。
本当に大丈夫だろうか、と。