EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】


 恐怖と快楽の渦に飲み込まれ目を閉じる度、瞼に優しくキスされた記憶が頭の片隅に残る。

小鳥は隣で眠っているフェオドールの綺麗な顔を寝そべったまま見つめた。


(どう、して…?)


散らされた純潔。

可憐な薔薇を掻き乱すように、彼は小鳥のそれを容赦なく奪っていった。

フェオドールは、嵐だった。


(私…どうしてこんなこと、されたの…?)


嫌がらせだろうか。


(でも…名前、呼んでって…何回も言われた…)


嫌いな相手にそんなことを要求するだろうか。

抱きしめてくれる腕に、肌を這う熱い吐息に、小鳥は紛れもない彼の愛情を感じた。

だがしかし、「好きだ」とは言われていない。


「フェ、オ…さ…ん…」


掠れた声で囁けば、彼の瞼がピクリと反応する。

浅い眠りだったのか、間をおかずに目覚めたフェオドールの青い瞳がゆっくりと小鳥を捉えた。


「こと…り……」


フェオドールの指先が小鳥の頬をなぞる。

その手つきはとても愛おしげで――。


(気持ちいい…)


嫌悪感はない。

小鳥がされるがままになっていると、フェオドールがうわごとのような声を発した。


「すきだ…」


「え…?」


「すき……だから…ちゃんと」


「フェオ、さん…?」


「おれの…そばに、いて…」


彼の指から力が抜ける。

パタリとシーツに落ちる手。

再び目を閉じたフェオドールは安心しきった顔で眠りについた。

「フェオさん…!?」

不意打ちで聞いてしまった告白に小鳥がドキドキして真っ赤になったのは言うまでもない。








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