EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】
「あっ、あの、あのあの……っ!あ、アイス!!アイス食べませんか!?」
「え?」
迫られていた小鳥の視界にチラリと入ったもの。
それは屋台の看板にデカデカと書かれた「アイス屋」の文字だった。
話の流れを変えたくてとっさに思いついたこととはいえ、あまりに突拍子もなかっただろうか。
言ってから後悔する小鳥。
すると、フェオドールが身体を少し離して屋台を確認した。
「アイス、食べたいんですか?」
頷くしかない小鳥はコクコクと首を縦に振る。
そんな彼女の行動をフェオドールは馬鹿にしたりしなかった。
柔らかく微笑んでベンチから立ち上がる。
「では俺が買ってきます。マドモアゼル、君は待っていて」
「えっ、でもお金…!」
「それなら…たぶん…」
ゴソゴソと、自分が穿いているズボンのポケットを探り始めたフェオドール。
「……あ、やっぱり。あった」
彼が取り出したのは黒い財布だった。
「出掛ける時は必ず持ってます。こういう時のために、必要だから」
ニッコリ笑顔でそう言うと、フェオドールはすぐ目の前にあるアイス屋へと行ってしまった。