EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】


 さて、小鳥と別れた後、部屋に戻ろうとした静理だったが。

「ん?オーレリアン?」

たまたま図書室から出てくるオーレリアンに遭遇。

向こうも静理を発見し、かなり驚いている様子だ。

「静理?もう帰ってきたわけ?早くない?」

「オーレリアンこそ、どこにも行かなかったのかい?」

「僕は兄様の演奏だけ聴いて帰ってきた。あとは時間の無駄」

広場の野外ステージではフェオドールのヴァイオリン演奏が予定されていた。

残念ながら小鳥と静理は演奏が始まる前に広場から出てしまったので聴いていない。

「白魔とか、ルカ達は?」

「たぶんあいつらはまだ馬鹿みたいに広場でメスブタのこと探してる」

「じゃあ、まだみんな外か……」

「だろうね。おかげで快適。うるさいのが留守っていいよな」

そのまま立ち話を終えて自室に行こうとするオーレリアン。

静理はそんな末っ子を慌てて呼び止めた。

「待って。後で話があるから、居間に来てくれないかな」

「話?今じゃダメなわけ?」

「とても重大なことで、兄弟全員に伝えたいんだ。みんなが帰ってきたら、また声を掛けるから」

「ヤダ。面倒臭い」

「お願いだ。頼むよ、オーレリアン」

珍しく静理が困ったような顔で懇願してきた。

オーレリアンは驚きつつ、少し考える。

「……重大、ね。何か知らないけど、わかった。研究時間調整しとく。どうでもいいことだったら本の角で殴るから」

図書室から持ち出した分厚い文献を見せつけてからオーレリアンは静理に背を向けた。

「ありがとう」

下手に隠しておくよりも、ちゃんと打ち明けておいた方が良いだろう。

静理はそう判断したのだ。


(小鳥ちゃんのことは……俺の責任だから)





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