EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
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それからというもの、静理が小鳥を気にして頻繁に部屋を訪れるようになった。
仕事がある日も欠かさず小鳥のもとへやって来ては、毎日忘れずに血を飲ませてくれる。
相変わらず吸うところは手や腕で、静理の両腕は小鳥の牙痕だらけに。
申し訳なく思う小鳥とは反対に、静理はこの牙痕を好きな子からのキスマークのように思っているのだが、それを言ってしまえば小鳥が恥ずかしがって吸ってくれなくなりそうなので内緒にしている。
さて、そんなふうに毎日触れ合っているせいか、小鳥の体は静理に対してあまり怯えなくなった。
(慣れた、のかな?良かった……。静理さんのことはやっぱり好きだから、拒絶なんてしたくないし)
もう二度と君を傷つけない、という言葉を静理は守ってくれている。
(私も、落ち込んでないで元気ださなきゃ)
あの日からほとんど自室から出ることなく過ごしている小鳥。
他の兄弟達にも会っていない。
(私のこと、皆さんに話したって静理さん言ってたけど……)
そろそろ自分から動かなくては。
いつもの自分に、戻るために。
(……もう、いい加減、受け入れなくちゃ)
胸に残ってしまった傷痕を鏡で眺めては、悪い夢だと思い込みたくて仕方なかった。
みっともなく泣き喚きたくなったことも、一度や二度ではない。
もう一度、鏡で傷痕を見つめてから、小鳥は自分の瞳と視線を合わせた。
「大丈夫。私は……大丈夫」
自分を納得させるために鏡の中の自分へ笑顔を向ける。
そして小鳥は部屋を出た。