EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
何を隠そう、静理は両思い未経験者である。
これは夢だ、と変な方向に思考を傾けた。
「っ……そうだ。現実なんて、悪夢でしかない。こんな都合の良いこと……夢だからで」
「夢じゃないです!夢にしないで下さい!私だって静理さんのこと、いっぱい好きでいたいんです!」
次の瞬間、静理の頬が真っ赤に染まった。
「なら、君は……カロンのことは……」
「ゲホッ……あー、静理。さっき俺が言ったこと、全部嘘だから。俺が今更言う必要ないだろうけど、小動物はあんたのこと大好きだから」
緩んだムチを首から外しながらカロンが口を挟む。
それをBGMのように聞きながら、静理は小鳥の次の言葉にこれ以上ない程緊張した。
「静理さん。私のこと、好きですか?」
心は即答していた。
けれど、なかなか口には出せなくて。
「……好き、だよ」
葛藤しながら、やっと吐き出せた。
しかし静理が安堵する間もなく、小鳥は更に続ける。
「なら、好きだから、そばにいるって言って下さい」
「っ……」
「罪人なんかじゃなくて、恋人として、隣にいて下さい」
恋人。
その美しい言葉は静理にとって、自分とは縁遠いものであり続けた。
あり続ける、はずだった。
「俺で……いいの?君は……」
「静理さんは……頼れるお兄さんのようでいて、本当は全然違いますよね。不器用だし、頑固だし、素直じゃないし……。でも、そんな静理さんだから、ほっとけないです」