EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
否定しようとした小鳥の口に、静理は再び触れるだけのキスを落とす。
「……良いんだ。自分が一番よくわかってる。変わったと言うよりも、俺は……今の自分を作ったんだ」
「作った……?」
「うん。きっかけは、俺がジェラルドに保護されてこの屋敷にやって来た時かな。その頃の俺は、俺の人生の中で一番精神的に不安定な状態でね。目に映る相手はみんな敵に見えたし、自分のこともどうでもよくて、生きることに投げやりだった。自暴自棄に、近かったかな」
小鳥は静理の背中の傷痕を思い出した。消えずに残る程、それは静理を苦しめたのだ。
過去の静理が絶望の中で自殺しなかったことだけが救いのように思える。
「そんな俺が、この屋敷で生活することになって、白魔を紹介されたんだ。当時はまだここには白魔しかいなかったから、俺と白魔の二人で暮らすようになったんだけれど……まあ、あの頃の俺が部屋で大人しくしてるはずもなくて、ね。よく物は壊したし、八つ当たりして暴れたし、白魔と廊下で会ったら挨拶代わりに暴言を吐くのが普通だったよ」
「白魔さん、怒りませんでした……?」
「怒っていたみたいだけれど、最初の頃は白魔からあまりキツく注意されることもなかったんだ。ただずっと俺をゴミを見るような目で見ていただけでね」
半分しか血が繋がっていないが兄弟だと知らされた時、白魔も静理も互いのことを絶対に分かり合えないと感じた。
片や優等生のようなお坊ちゃん、片や素行不良の問題児。
相容れるわけがない。