EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】

「けれどある日、とうとう白魔の堪忍袋の緒が切れた。忘れもしないよ。俺が思い切り椅子を蹴り飛ばした後、白魔がナイフで俺の肩を刺したんだ」

「えっ!?肩を!?大丈夫だったんですか!?」

「うん。グッサリ入っていたけれど致命傷でもないし、そこまで酷くはなかったかな」

怪我の具合よりも、と静理は苦笑する。

「正直俺は、誰かを殴ったこともないようなお坊ちゃんの白魔より自分の方が喧嘩が強いと思っていたから、白魔のナイフを避けることができなかったことが驚きでね。そもそも、白魔が誰かを刺せるような奴だとは思っていなかったんだ。何不自由なく生きてきたお坊ちゃんに、そんな勇気も根性ないだろうと、内心馬鹿にしていたから……。あ、今のは白魔には内緒にしておいてくれないかな」

「はい、内緒にします」

「ありがとう。それでね……そんな白魔が、俺を刺して、あのゴミを見るような目で言ったんだ」


ーー君さ、この屋敷で暮らすつもりなら、相応しい振る舞いを身につけなよ


「その時、気づいたんだ。俺が白魔に対して、毎回意味もなく暴言を吐いていた理由に。無意識だったんだけれど、俺は白魔に嫉妬していたようでね。もしも、俺が白魔と同じようにこの屋敷で産まれていたら、もっと違う人生だったのかな、とか……無意味な仮定を想像して妬んで苛立って……当たり散らすことでしか自分の心を主張できなかったんだ。本当に、どこまでも子供だったよ」

だから、と静理は続ける。

「白魔の軽蔑するような眼差しに喧嘩を売られた気がした俺は、ムカついてその喧嘩を買ったんだ」

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